【はじめに】
 分子構造を計算で決める,と聞くと,誰しも最初に思い浮かべるのが,量子力学計算である.
 残念ながら,この微分方程式を厳密に解くことが出来るのは水素原子だけであり,コンピュータを用いても正確に計算できるのは水素分子までである.幾つかの近似を経て長い計算時間を要しても,有機分子の構造を予測するのは容易ならぬ事である.
 代わりに,分子の世界を原子→球,結合→棒,という極めて古典的な世界に置き換えて,球の位置や棒の長さを決める関数を導入して分子構造を予測しようとする研究が1950年代から行われてきた.
 本実験では,分子作成プログラムMOLDAで作成した分子について,MM2力場による安定構造の予測をTINKERプログラムにより行う.

【分子力場計算のイメージ】
 分子力場計算では,原子又は原子対毎の相互作用を古典的な関数で記述し,相互作用パラメータは実験に合うように割り当てて,分子の安定構造を計算する。一般に分子力場は次の項から成る。

V = ΣV伸縮 + ΣV変角 + ΣVねじれ + ΣVvdW + ΣV静電

【参考ホームページ,参考書】
TINKERホームページ http://dasher.wustl.edu/tinker/
 ニューメキシコ大学のグループの作った分子力場,分子動力学計算のプログラム・パッケージの総称がTINKERである.この実験ではoptimize.exeを用いた.Win95/NT, Mac, UNIX, Linux等のOS上で走る実行形式プログラムとソースコードが無償で提供されている.MM2,MM3,CHARmm, Amber等の著名な力場及び,彼らオリジナルのTINKER力場を用いた計算が簡単に行える.本実験で用いたMM2力場については,U. Burkert and N. L. Allinger, Molecular Mechanics, ACS, 1982(邦訳,分子力学,大沢映二/竹内敬人訳,啓学出版,1986)を参照して下さい.

MOLDAホームページ http://molda.chem.sci.hiroshima-u.ac.jp/
 広島大学の吉田先生により,各種の分子力場,分子動力学,量子化学計算プログラムの入力用座標データを作成するために作られた.Win95/NT,Java(機種を問わない)の実行形式プログラムが無償で提供されている.

計算生化学のホームページ http://www.biwa.ne.jp/~k-sugino/
 MOLDAやTINKERを用いた計算例が分かりやすく書かれている.