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Polymer Functionalization Laboratory in NUT

生物機能工学演習3日目 ー量子化学計算ー

生物機能工学演習3日目 ー量子化学計算ー

半経験的分子軌道法プログラムMOPACを用いて量子化学計算を行い,得られた分子軌道を観察する.量子化学計算では,波動方程式HΨ=EΨを解いて,波動関数とエネルギーを同時に決定する.しかし,この方程式を厳密に解くことが出来るのは水素原子のみである.

一般に有機分子については,波動関数を幾つかの既知の関数の足しあわせΨ=c1Ψ1+c2Ψ2+c3Ψ3+c4Ψ4……..で表現し,その係数をエネルギーが最小になるように決める(変分法).更に半経験的分子軌道法では,分子の物性を再現するように予め決めた経験的パラメーターを導入して,計算時間と計算量を減らしている.

 

 

1.エチレンのπ軌道の観察

1)エチレンの組み立て

WebMO上で行う.先ずC-C結合を描く.更にもう一度同じ炭素をなぞると二重結合になる.炭素が大きすぎると操作が上手く出来ないので注意すること(その場合は設定を変えて表示を小さくする)

 

 

スパナアイコンをクリックすると,水素が付加され,結合長や角度が自動調整される.

 

2)MOPACで計算

ウインドウ下の右ボタンをクリックする.Choose Computational EngineはMopacを選択.

 

右下矢印をクリックする.Molecule is nearly ...が表示されたらOKをクリック.

Configure Mopac Job Options

Caluculation: Geometry Optimization

Theory: PM3

を選択

Charge: 0を入力
(何も入力されていないとエラーになる)

 

Advancedタブをクリック.Addtional Keywords: GRAPHFと入力.

入力後,右下矢印をクリックする.セキュリティ警告が出る場合は,「許可する」をクリックする.計算開始.少し時間が掛かる.計算が終わっても直ぐにブラウザの表示が更新されない時があるので,時々,リロードするとよい.

 

4)Jmolで計算結果を表示

始めにJmolを次の手順でダウンロードする.ceasの所定のリンクを右クリックし,「対象をファイルに保存」を選択する.ダイアログボックスの中のファイル名はJmol.zipとなっているので,Jmol.jarに変更して,「保存」をクリック(ダウンロードされる).Jmol.jarをクリックするとJmolが起動する.

 

Job managerで,計算結果の入ったジョブをチェックし,「Download」ボタンを押す.

「archiveXXXX.zip(XXXXはジョブ番号)を開きますか,または保存しますか?」と聞いてくるので「ファイルを開く」をクリックする.

ダブルクリックすると「学籍番号」フォルダが表示される.更にそれをダブルクリックすると「ジョブ番号」フォルダが見える.この中にあるinput.mgfを,Jmolの空のウインドウにドラッグ&ドロップすると分子構造が読み込まれる.
5)右クリックメニューで,surface → molecular orbital → 6個目の軌道を表示(HOMO:highest occupied molecular orbital,電子に占有されている一番エネルギーの高い軌道,LUMO: Lowest Unoccupied Molecular Orbital 最低空軌道,電子が入っていない軌道で一番エネルギーが低いもの)MOPACでは最外殻電子しか扱わない.MO一個につき,電子は2個入るから,最外殻電子数=価電子の総数1×4+4×2=12個を2で割って,電子が占有しているMOの数は6になる.(整数値の隣に示されているのは,分子軌道のエネルギー,単位はeV).画面のOccupancy(占有数)は0が空軌道,1または2であれば電子が占有している軌道.

6)適当に回転させて軌道の形を観察し,有機化学の教科書にあるπ軌道と比較せよ.また7番目のπ*軌道(LUMO, lowest unoccupied molecular orbital)も観察せよ

表示された分子軌道の図を,Jmolのカメラアイコンをクリックして保存する.

【重要】保存先は「統合用アカウント名」(Z:)と表示されているドライブ内とすること

(各自のアカウントで見えているフォルダは実際には,ネットワーク上にある.Jmolでは実際のドライブ名を指定しないと保存できない仕様らしい)

分子モデリング2日目 課題(発展問題以外は必ず行なうこと)

2-1. エチレンについて,テキストの例に従い操作を行え.得られた分子軌道をレポートに添付し,HOMOとLUMOのエネルギー差を求めよ.また,HOMOとLUMOの分子軌道を観察し,LUMOの方がエネルギーが高い理由を説明せよ.

2-2.ブタジエンCH2=CH-CH=CH2について,エチレンと同様の操作で分子を作成し,HOMOとLUMOを観察せよ.HOMOとLUMOのエネルギー差はエチレンに比べて大きいか,小さいか調べよ.


【発展問題】(適切に回答した場合は加点する)

2-3.β-カロテンは可視光を吸収し,呈色する(にんじんのオレンジ色の主成分).これについて,次の問いに答えよ.分子構造はトランスジグザグ(伸び切り鎖)とすること

1)ビタミンAのモデルとしてCH3-(CH=CH-)5-CH3を組み立てよ

2)MOPACでエチレンと同じように,構造最適化(Calculation: Geometry Optimization)せよ.次に,励起状態の構造を計算するため,Addtional KeywordsにexcitedとGRAPHFを追加し,Calculation: Molecular Energyに変更(下記の図.この設定を忘れると異常に時間が掛かるので注意!)して,MOPACで量子化学計算を行い,HOMOとLUMOの軌道を表示せよ(occupancy = 2で一番エネルギーの高いのがHOMO,occupancy = 0で一番エネルギーの低いのがLUMO)excitedで構造最適化すると相当時間が掛かるので注意!).また,その両者のエネルギー差はいくらか? このエネルギー差に等しい光の波長はいくつか?実測のビタミンAの極大吸収波長の値と比較せよ.

3)同様にして,β−カロテンのモデルとしてCH3-(CH=CH-)11-CH3を組み立て,MOPACで構造最適化(Calculation: Geometry Optimization)した後,励起状態の量子化学計算Calculation: Molecular Energyに変更 Addtional Keywordsにexcited とGRAPHFを追加)を行い,HOMOとLUMOの軌道を表示せよ.また,その両者のエネルギー差はいくらか? このエネルギー差に等しい光の波長はいくつか?実測のβ-カロテンの極大吸収波長の値と比較せよ.